STORY
ある日、別荘で首を吊って亡くなっていた森田かすみが発見され、
夏樹陸が容疑者として浮かんできた。
しかし、他殺と見られたその事件は「自殺」と判断され、
夏樹には無罪判決が下った。
「判決・・・無罪」
娘を失い、気持ちの整理をつけることができない森田凌平は、
時間が止まったような生活を送るようになった。
それから半年後の冬、凌平の身を案じた親友の伊藤健一により
「凌平の為に真実を追求する」という名目で、
判決に疑問を持った10人がかすみの亡くなった別荘に集められた。
そして始まる、あの時のあの場所で一体何が起きたのかという話し合いが・・・。
事件と裁判の一部始終を追いかけている新聞記者の浅井幸助。
凌平の会社の元弁護士で今は検事の馬場貴明。
いつもかすみを見守っていた中学校の担任、影山雄太。
事件の被害者に寄り添う活動をしている五十嵐智久。
世間体を気にする凌平の姉で、かすみの叔母でもある鯨井祥子。
祥子の娘で、かすみを妹のように思っていた鯨井久美。
自殺か?それとも他殺なのか?
各々が主張する推論と矛盾に閉ざされた空間で、凍てついた感情だけが過ぎてゆく。
一体どれだけの沈黙が続いたのだろうか・・・。
時計の針は無情にも正確に時間を刻んでいく・・・。
謎に包まれた事件の真相を巡り、
集まった10人のむき出しの感情と本心を鋭く暴いていくサスペンス密室劇。
残酷なパラドックスの果てに導き出されるテーゼを知ったとき、
人は本当の優しさの意味を知る。